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今月のアイルランド

IRELAND THIS MONTH 今月のアイルランド
第二十六回 2007年9月  
カラン CALLAN

ガイドブックにも載っていない小さな町、カラン。しかし、どんな町にも古い歴史があり、教会や古い町並みがあるのがアイルランド。ここカランとその周辺も、意外に多くの中世の史跡が散在しており、ちょっとマニアックな観光客が見られます。勿論、地元の人の日常生活は常に息づいています。しかも今年は町ができて800年の記念すべき年です。


町並み を見る限り、一応の町なんだな、という感じがします。古くからの商店街もあり、近郊から車で買い物などに来る人が、それなりにいるようです。メイン・ストリート(写真下)は広くて明るい感じですが、国道のバイパスができたので、交通量は少なく静かです。一歩裏通りに入ると、写真右のように、狭い道の両側に古い家並みが並んでおり、予想以上に情緒に溢れていました。

ベーカリー が2軒、一つは現役、一つは廃業。こんな田舎町にも2軒のベーカリーがあったんだな、と考えて、そもそもアイリッシュは昔からパンを食べていたのだろうか、と考えてしまいました。ポテトが主食の島国、パンが一般的になったのは、日本同様、案外最近なのでは。それにしても、写真左のパン屋は、立派な構えの堂々たる店です。下は廃業した方で、見るからに簡素なお店で、対照的です。

ローカル・コミュニティー はアイルランド、特に田舎ではまだまだ強い、と思っていたのですが、やはり現代において、昔のままというわけにはいかないようです。下はこの町のタウン・ホール。一種のコミュニティーセンターで、日本で言えばさしずめ公民館でしょうか。でも今はカフェになっていました。コミュニティーセンターとしての機能が必要なくなったのでしょう。右はいわゆる生協で、現役です。古い看板を含め、古色蒼然とした佇まいがレトロな味わいを感じさせますが、裏返せば今の時代、あまり栄えていないということかもしれません。

修道院 の廃墟が、この町にもあります。アウグスティヌス会に属するフランシスカン修道院の跡で、そこそこ立派なものです。残念ながら、鍵がかかっていて中には入れませんでした。1461年に創設され、1471年完成、1540年にヘンリー8世によって破壊されて、以後廃墟として五百年近い年月を経てきている、ということです。

ケルズ は、カランの東、車で10分足らずの所にある隣村です。有名な、ブック・オブ・ケルズが作られたとされるケルズは、ミース州で、同名ですが、こことは無関係です。この小さな村にもやはりアウグスティヌス会の修道院跡が残っているということで、立ち寄ったのですが、これが意外なまでに大規模で、圧倒されてしまいました。それもその筈、中世の一時期、ここはキルケニーの中心都市として栄えたのです。実はカランよりずっと古い修道院で、1193年創設です。今はカランよりずっと小さな村ですが、かつてはこちらの方が大きな村だったのでしょう。それを偲ばせる修道院跡では、羊がのんびり草を食んでいました。

キルリー は、ケルズの南、車なら3分程度の所にある教会跡。このあたり、中世の史跡がかなり多いです。ここに残っているのは、27メートルのラウンドタワーとハイクロスで、何もない農村地帯の中に、忽然とあります。こんな場所ですから、ラウンドタワーが割と遠くから見えて、道に迷う心配がありません。ここを含め、ラウンドタワーがある場所は、たいてい教会の廃墟があり、墓地があり、墓地だけが現役、というのが、何か生々しいです。この時は人の気配は全くなく、周囲では牛がのんびりと草を食んでいました。

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